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【数字で会社を動かす⑥】銀行に出す事業計画書の書き方|2回目以降の融資

創業のときは、実績がない代わりに「計画と自己資金」で見てもらえました。2回目以降は違います。決算書という実績が積み上がったうえで、そこに計画を重ねて見られます。

そのため、2回目以降の事業計画書でいちばん問われるのは、次の一点に集約されます。

この会社は、これから稼ぐお金で、この借入を返せるのか

この記事では、その問いに答える事業計画書をどう組み立てるかを整理します。銀行がそもそも会社をどう見ているのかは、次の第7回で扱います。

※ この記事は令和8年9月12日現在の法令・公表情報にもとづいています。

この連載(全10回)の構成

回テーマ
第1回経営計画書とは何か|いつ必要になり、何の役に立つのか
第2回損益分岐点|いくら売れば赤字にならないか
第3回資金繰り表の作り方|黒字なのにお金が残らない理由
第4回経営計画書の作り方|利益から逆算して数字を組み立てる
第5回創業計画書の書き方|公庫の様式10欄を順に埋める
第6回(この記事)銀行に出す事業計画書の書き方
第7回債務者区分|銀行はあなたの会社をどう見ているか
第8回経営改善計画書|業績が落ちたときの立て直し
第9回社長が毎月見る5つの数字|月次決算の経営者目線
第10回予実管理|計画と実績のズレの見方と直し方

1. 銀行が事業計画書で必ず確認する3点

枚数や体裁より先に、次の3つに答えられているかを確認してください。この3つが書かれていない計画書は、何枚あっても稟議書になりません。

確認される点具体的に問われること
① 返済能力計画期間中の「当期純利益+減価償却費」で、既存と新規の借入の年間返済額をまかなえるか
② 資金使途借りたお金が何に使われるのか。前向きな資金需要か、赤字の穴埋めか
③ 説明と数字の整合なぜ今の状態になったのかの分析と、これから打つ手と、数値計画がつながっているか
事業計画書で答えるべき3つの問い 何に使うのか、何で返すのか、その数字は本当かという3つの問いと、それぞれに対応する記載内容を並べた図。 事業計画書は、この3つの問いへの回答書 何に使うのか 何で返すのか その数字は本当か 資金使途 増加運転資金◯◯千円 設備資金◯◯千円 (見積書・契約書を添付) 返済原資 当期純利益 + 減価償却費 > 年間返済額 根拠 売上=単価×数量に分解 受注書・契約書 過去の実績との連続性 担当者はこの資料をもとに、行内の稟議書を書きます。 「担当者が稟議書を書きやすい形になっているか」が、実は通りやすさを左右します。
図1:事業計画書で答えるべき3つの問い

もうひとつ、意識しておきたいことがあります。窓口の担当者は、あなたの計画書をもとに行内の稟議書を書きます。 担当者が上司や本部に説明しやすい形になっているかどうかは、実際の通りやすさに影響します。事業の概要図や商品パンフレットを添えると喜ばれるのは、このためです。

2. 資金使途——「運転資金」の一言で済ませない

もっとも差がつくのが、この欄です。「運転資金 10,000千円」とだけ書かれた申込みと、内訳が書かれた申込みでは、扱いが変わります。

書き方評価
「運転資金 10,000千円」何に使うか分からない。赤字の穴埋めではないかと疑われる
「売上増加に伴う増加運転資金 10,000千円(売掛金の増加6,000千円・在庫の増加4,000千円)」前向きな資金需要として理解される

増加運転資金は、いちばん説明しやすい借入理由

第3回でご紹介した式を、そのまま使います。

経常運転資金 =(受取手形 + 売掛金 + 棚卸資産)-(支払手形 + 買掛金)

前期末と今期末(または直近月)でこの金額を計算し、増えた分を示してください。売上が伸びた分だけ立替が増えているという事実は、決算書から誰でも確かめられます。

設備資金は見積書で裏づける

設備資金は、見積書・契約書・図面で金額を裏づけます。あわせて、その設備によって何がどれだけ増えるのかを書いてください。

  • 生産能力が月◯◯個から◯◯個へ
  • それにより売上が年間◯◯千円増加
  • 増加する減価償却費は年間◯◯千円
  • したがって返済原資は◯◯千円増える

設備投資の場合、返済原資はその設備が生む収益と減価償却費です。 この因果を1枚に書けると、計画書の説得力が大きく変わります。

避けたい資金使途

  • 使いみちが曖昧なまま「当面の運転資金」
  • 他行への返済に充てる(説明なしに行うと、信頼を大きく損ないます)
  • 社長個人への貸付や、関連会社への資金流用

とくに最後は要注意です。第7回で見るとおり、役員貸付金は実態バランスシートで資産から落とされるうえ、資金使途違反として扱われる可能性があります。

3. 返済原資——「利益で返す」ではなく、式で示す

返済原資は、過去の利益ではなくこれから生み出すキャッシュフローです。書き方は決まっています。

返済原資 = 当期純利益 + 減価償却費

これが、既存借入+新規借入の年間元金返済額を上回ること

第3回の図で見たとおり、ここが逆転していると、借りた瞬間から現金が細っていきます。銀行は、この一行を必ず計算しています。

計画表には、この行を自分で入れておく

損益計画の下に、次の3行を足してください。多くの計画書に抜けている部分です。

行内容
簡易キャッシュフロー当期純利益 + 減価償却費
年間元金返済額既存借入+今回の借入の合計
差引上-下。ここがプラスであること

差引がマイナスになる計画しか書けないなら、借入額か返済期間の設定に無理があります。 申し込む前に、返済期間の相談をしたほうが結果的に早く進みます。

4. 売上計画の根拠——願望と計画を分ける

もっとも厳しく見られるのが、売上の伸びです。前期比1.5倍の計画を出せば、必ず根拠を聞かれます。

分解して示す

第4回と同じく、単価 × 数量に分けます。

売上高 = 客数(販売数量)× 客単価(販売単価)

そのうえで、増える理由を、数量側と単価側のどちらなのかをはっきりさせます。

根拠には「外から確かめられるもの」を使う

強い根拠弱い根拠
確定した受注書・注文書・契約書「営業を強化する」
取引先からの増産・増枠の内諾(書面・メール)「市場は拡大が見込まれる」
過去3年の実績の延長線上にある数字前期比1.5倍(理由の記載なし)
出店計画と、既存店の実績にもとづく売上予測「新規顧客を開拓する」
見込み客リストと、過去の成約率「知名度を上げる」

過去の実績との連続性も、見落とされがちな要素です。ずっと横ばいだった会社が急に右肩上がりの計画を出すと、その差を埋める説明が必要になります。逆に、直近数か月の月次試算表で伸びが始まっていることを示せれば、計画は一気に現実味を帯びます。

ここでも、毎月の月次決算が効いてきます(第9回)。

5. 添付すべき5つの資料

計画書本体だけでなく、次を一緒に出してください。

資料役割
月次の資金繰り表(実績+今後6か月〜1年)融資実行後に資金が回ることを示す。第3回で作ったもの
月次損益計画(3〜5年の年次+初年度は月別)返済原資の推移を示す
見積書・契約書・受注書資金使途と売上根拠の裏づけ
直近の月次試算表決算後の状況を示す。数か月分あるとなお良い
事業の概要が分かる資料(商品パンフレット、ビジネスモデル図)担当者が稟議書を書くための材料

このうち資金繰り表は、第3回でも書いたとおり、確定していない入金予定を入れないことが鉄則です。一度外れると、以降の数字すべてが疑われます。

6. 「非財務」の材料も添えておく

第7回でご紹介するとおり、債務者区分の判断では、財務以外の要素も勘案されることになっています。せっかくなので、計画書に織り込んでおきましょう。

金融検査マニュアル別冊が挙げていた項目から、中小企業が示しやすいものを拾うと、次のようになります。

  • 特許・実用新案・商標などを背景とした新規受注の状況や見込み
  • 新商品・サービスの開発や販売の状況
  • 取扱商品・サービスの業界内での評判(掲載記事、受賞歴など)
  • 販売先・仕入先との取引条件の優位性
  • 後継者の存在
  • 経営改善への取組み姿勢、計算書類の質の向上への取組み

また、金融庁は金融機関の職員向けに**『業種別支援の着眼点』(建設・飲食・小売・卸売・運送・製造・サービス・医療・介護・宿泊の10業種)を公表しており、令和8年3月には資金使途別に何を見るかをまとめた「逆引き着眼点」**も加わりました。

これは本来、銀行員が読む資料です。 自社の業種のページを事前に読んでおくと、面談で何を聞かれるかがかなり予測できます。誰でもダウンロードできます(末尾にリンクがあります)。

7. 2026年5月、新しい選択肢が加わりました

令和8年(2026年)5月25日、「事業性融資の推進等に関する法律」が施行されました。 不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、事業の将来性にもとづく融資を後押しするための法律で、企業価値担保権という新しい担保が使えるようになっています。

項目内容
担保の対象個別の不動産ではなく、会社の総財産(同法7条)
公示商業登記簿に登記される(同法15条)
想定される場面有形資産に乏しいスタートアップ、地域の中小・中堅企業の設備投資、事業再生・事業承継、M&A
会社側の義務融資判断の前提(事業計画等)を超える財産処分をする際は、担保権者と事前の協議・同意が必要(同法20条)

ただし、いますぐ広く使える制度ではありません。金融庁のFAQ等から、次の点は押さえておく必要があります。

  • 想定される類型は、既存の借入をすべて借り換えて行うか、借入のない会社への融資です
  • 「企業価値」は将来見通しに依存するため、銀行の引当の計算上は「一般担保」としては扱えないとされています
  • 採用するかどうかは各金融機関の経営判断であり、すべての銀行が取り扱うわけではありません

それでも、方向性ははっきりしています。担保と保証から、事業の中身と将来のキャッシュフローへ。 そしてその中身を伝える手段は、結局のところ数字のそろった決算書と、根拠のある事業計画書しかありません。この連載で積み上げてきたものが、そのまま効いてきます。

8. 提出前のチェックリスト

  • 資金使途が、内訳つきで具体的に書かれているか
  • 設備資金に見積書・契約書が添付されているか
  • 「簡易キャッシュフロー > 年間元金返済額」の行が計画表に入っているか
  • 売上計画が単価 × 数量に分解されているか
  • 増加の根拠が、外から確かめられる資料に結びついているか
  • 過去3年の実績と、計画の連続性が説明できるか
  • 資金繰り表(実績+今後6か月〜1年)が付いているか
  • 確定していない入金予定を書いていないか
  • 直近の月次試算表が付いているか
  • 担当者が稟議書を書ける材料(事業の概要資料)が付いているか

まとめ

  • 2回目以降の融資で問われるのは**「これから稼ぐお金で返せるか」**の一点
  • 銀行が確認するのは①返済能力 ②資金使途 ③説明と数字の整合の3つ
  • 資金使途は「運転資金」で終わらせない。増加運転資金は、もっとも説明しやすい前向きな借入理由
  • 返済原資は当期純利益+減価償却費。これが年間元金返済額を上回ることを、計画表の行として自分で示す
  • 売上計画は単価 × 数量に分解し、根拠は外から確かめられる資料に結びつける
  • 添付は資金繰り表・損益計画・見積書等・月次試算表・事業概要資料の5点
  • 財務以外の材料(技術力、取引条件、後継者の存在など)も織り込む。金融庁の**『業種別支援の着眼点』**は事前に読んでおく価値がある
  • 2026年5月25日施行の事業性融資推進法で企業価値担保権が加わったが、使える場面はまだ限られる

次の第7回では、その銀行が会社をどう見ているのか——債務者区分という仕組みを、公開されている一次資料から読み解きます。

当事務所では、事業計画書の作成から金融機関との面談への同席まで対応しています。代表は事業会社での経理・連結納税の実務経験があり、数字の根拠づくりを得意としています。板橋区・大山で融資のご相談は、無料相談をご利用ください。

参考(公的情報)

なお、会計の実務では、金額を千円単位で表すことがよくあります。この記事もそれに合わせています。1,000千円 = 100万円と読み替えてください。

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