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【会計業務シリーズ⑤】決算と法人税申告|決算日後2か月で何が起きるか

連載の最終回は、年に一度の大仕事——決算と法人税申告です。

第4回までで、証憑を集め、記帳し、毎月締めるところまで来ました。決算は、その1年分を締めて税額を確定させ、申告する作業です。

多くの会社にとって意外なのは、決算日から申告までがわずか2か月しかないことです。しかもその2か月の中に、決算整理、決算書の作成、株主総会、申告書の作成、そして納税が全部入ります。この記事では、その2か月に何が起きるのかを、板橋区大山の税理士・行政書士が時系列で整理します。

※ この記事は令和8年9月2日現在の法令・公表情報にもとづいています。

この連載(全5回)の構成

回テーマ
第1回会計業務の全体像|取引から決算・申告までの1年の流れ
第2回証憑の集め方と保存|経理の実務と電子帳簿保存法・インボイス
第3回日々の記帳|仕訳と勘定科目の基本
第4回月次決算と試算表の読み方
第5回(この記事)決算と法人税申告|決算日後2か月の流れ

1. 決算日から申告までの2か月

3月31日決算の会社を例に、時系列で見てみます。

決算日から申告・納税までの流れ 3月31日決算の会社を例に、決算日の直後に取引の入力を確定し、決算整理、決算書の作成、株主総会の承認を経て、決算日から2か月以内の5月31日までに申告と納税を行う流れを示した図。 例)3月31日決算の会社 3/31 決算日 5/31 申告・納税の期限 1 取引の入力を確定 3月中の売上・仕入・経費をすべて入れ切る 2 決算整理 棚卸・減価償却・経過勘定などを調整する 3 決算書を作る 貸借対照表・損益計算書ほか4種類 4 株主総会で承認を受ける ここで決算が会社として確定する 5 法人税・地方税・消費税の申告書を作り、申告して納税する 期限はいずれも決算日の翌日から2か月以内(3/31決算なら5/31) ※ 定時株主総会は決算日から3か月以内。申告期限(2か月)のほうが先に来るため、   総会が間に合わない会社は「申告期限の延長の特例」を申請しておきます。
図1:決算日から申告・納税までの流れ

株主総会は3か月以内、申告は2か月以内という、順番が逆になりうる関係に注意が必要です。総会を2か月以内に開けない事情がある会社は、申告期限の延長の特例を申請しておきます。詳しくは会社設立後の税務届出12種類で扱っています。

2. 決算整理——1年分の数字を「正しい期間」に直す

決算整理とは、期中の記帳では処理しきれない部分を、期末にまとめて調整する作業です。ここで利益が動きます。 主なものは次の4つです。

決算整理何をするか何のためか
棚卸期末に残っている在庫を数え、仕入から差し引いて資産に振り替える売れた分だけを原価にするため
減価償却固定資産の取得価額を、耐用年数にわたって費用に配分する買った年に全額を経費にしないため
経過勘定前払費用・未払費用などで、当期分だけに費用と収益を調整する支払日ではなく発生した期間で計上するため
貸倒引当金回収できなくなるおそれのある債権について、あらかじめ費用を見積もる将来の損失に備えるため

棚卸は「実際に数える」

在庫は、帳簿の数字ではなく、実際に数えた数で確定させます(実地棚卸)。決算日に倉庫や店舗で数え、帳簿と突き合わせます。

在庫を実際より少なく計上すると、その分だけ売上原価が大きくなり、利益が小さくなります。これは利益操作とみなされる典型例です。手間でも、必ず数えてください。

減価償却と、40万円未満の特例

パソコンや車両など、取得価額が10万円以上の固定資産は、原則として耐用年数にわたって費用にしていきます。

ただし青色申告法人には、取得価額40万円未満の資産を、その期に一括で経費にできる特例(中小企業者等の少額減価償却資産の特例)があります。この上限は、令和8年度の税制改正で30万円未満から40万円未満に引き上げられました。

項目内容
1つあたりの上限40万円未満(改正前は30万円未満)
その期に使える合計額年間300万円まで
対象青色申告をしている中小企業者等。常時使用する従業員400名以下(出資金等が1億円を超える組合等は300名以下)
適用期限令和11年3月31日まで

引き上げ前に取得した資産は従来の30万円未満で判定されます。決算期が改正をまたぐ場合は、その資産をいつ取得したかを必ず確認してください。

経過勘定は「いつの分か」で分ける

3月決算の会社が、3月に「4月〜9月分の保険料」を払った場合、その全額を当期の経費にはできません。4月以降の分は前払費用として資産に振り替えます。

逆に、3月に使った電気代の引き落としが4月であっても、3月の費用として計上します(未払費用)。第4回で「月次でやっておくと決算が楽になる」と書いたのは、この作業のことです。

3. 作成する決算書は4種類

株式会社が作成する計算書類は、次の4つです。

書類何を表すか
貸借対照表(B/S)決算日時点で、どこから資金を調達し、何に使っているか(財政状態)
損益計算書(P/L)1年間でいくら稼ぎ、何に使い、いくら残ったか(経営成績)
株主資本等変動計算書資本金や利益剰余金などの純資産が、1年間でどう動いたか
個別注記表どのような会計のルールを採用しているかなどの補足

これらを取締役が作成し、定時株主総会に提出して承認を受けます。 承認を受けてはじめて、会社として確定した決算になります。

なお、株式会社には決算公告の義務もあります。官報や電子公告などで貸借対照表の要旨を公開するものです。実際には行っていない会社も多いのですが、義務であること自体は知っておいてください。

4. 申告と納税の期限

決算後に申告・納税する税金 法人税と地方法人税は税務署へ、法人住民税と法人事業税は都道府県や市区町村へ、消費税は税務署へ、いずれも決算日の翌日から2か月以内に申告と納税を行うことを示した図。 決算後に申告・納税するもの(期限はいずれも決算日の翌日から2か月以内) 法人税 地方法人税 提出先:税務署 もうけにかかる国の税 法人住民税 法人事業税 提出先:都道府県・市区町村 赤字でもかかる部分がある 消費税 地方消費税 提出先:税務署 預かった分を納める ※ 期限の日が土日・祝日にあたるときは、その翌営業日が期限になります。 ※ 東京23区内の法人は、法人住民税・事業税の窓口が都税事務所に一本化されています。
図2:決算後に申告・納税する税金

とくに注意していただきたいのが、赤字でもかかる税金があるという点です。法人住民税の均等割は、利益が出ていなくても課されます。「今期は赤字だから納税はない」と考えていると、資金の見込みが狂います。

また、申告期限の延長の特例を受けている場合でも、納税の期限は延びません。 2か月を超えた期間には利子税がかかるため、実務では2か月以内に見込みの税額を納付(見込納付)しておくのが一般的です。

5. 決算前にやっておきたい3つのこと

決算日を過ぎてからできることは、実はあまりありません。効くのは決算日より前です。

① 仮払金・仮受金を精算しておく

仮払金は、支出はあったのに、まだ経費になっていない可能性のある項目です。出張の仮払い、担当者に渡したまま精算されていない資金——中身を確定させて正しい科目に振り替えれば、その期の経費になるものが含まれています。節税の面からも、決算までにきちんと処理しておくことが大切です。

あわせて、中身が確定していない残高を決算書に残さないという意味もあります。銀行や税務署から見て、内容の分からない残高は印象がよくありません。

決算月の1か月前には、領収書を全部出してもらって振り替えてしまいます。

② 使わなくなった固定資産を処分する

すでに廃棄したパソコンや機械が固定資産台帳に残っていると、実態のない資産を計上したままになります。期末までに処分して除却の処理をすれば、その分を当期の費用にできます。

③ 納税額の見込みを立てておく

決算のわずか2か月後に、法人税と消費税の納付が来ます。決算の1〜2か月前に見込みを出し、納税分のお金をよけておく。これができているかどうかで、決算後の資金繰りがまったく変わります。

当事務所では、毎月の巡回監査のなかで納税の見込みをお伝えし、決算前には対策の打合せの時間を取っています。決算が終わってからでは、できることが限られるためです。

6. 会社と税理士の分担を、決算前に確認しておく

決算の作業を、どこまで会社が行い、どこからを税理士が行うか。これは契約の内容や会社の体制によって変わります。 記帳を自社で行っている会社と、記帳から任せている会社とでは分担が違いますし、同じ税理士事務所でも会社ごとに異なります。

下の表は、よくある分担の一例です。決まった形があるわけではありませんので、ご自身の会社ではどうなっているかを、決算前に一度すり合わせておくことをおすすめします。

作業よくある分担
期末までの取引の入力記帳を自社で行うなら会社、記帳を任せているなら税理士
実地棚卸(在庫を数える)会社
期末残高が分かる資料の用意会社
決算整理の仕訳税理士(会社側で入れている場合もあります)
決算書の作成税理士
株主総会の開催・承認会社(書類の準備を税理士が支援することもあります)
申告書の作成・提出税理士
納税会社(金額の連絡や手続きの案内は税理士)

そのうえで、現場でなければできない作業もあります。在庫を数えるのは会社の倉庫や店舗でしかできませんし、期末の通帳や契約書も会社の手元にあります。

会社側でご用意いただくことが多い「期末残高が分かる資料」は、たとえば次のようなものです。

  • 決算日時点の通帳(全口座。ネットバンキングの場合は残高が分かる画面)
  • 借入金の返済予定表(残高と、翌期に返す分が分かるもの)
  • 在庫表(実地棚卸の結果)
  • 売掛金・買掛金の一覧(取引先ごとの残高)
  • 期末近くに買った固定資産の請求書
  • 保険料・家賃など、期をまたぐ支払いの契約書や案内

これらが早く出てくるほど、決算は早く終わります。逆に、ここが遅れると申告期限が迫ってから一気に作業することになり、内容を確認していただく時間も、納税資金を用意する時間もなくなります。

当事務所の実感としても、月次できちんと処理ができている顧問先は、決算月の翌月中に申告書の作成まで終わっていることがほとんどです。特別な工夫をしているわけではなく、毎月やるべきことを毎月やっている、その差だけだと思います。

7. 1期目の会社が特に気をつけること

設立して最初の決算には、通常の年とは違う注意点があります。

  • 青色申告の承認申請を出したか……出していないと、1期目の赤字を翌期以降に繰り越せません。期限は「設立から3か月を経過した日」と「1期目の終了日」の早いほうの前日です
  • 設立費用・開業費の扱い……設立前後に支払った費用は、創立費・開業費として資産に計上し、任意のタイミングで費用にできます。1期目が赤字なら、あえて費用にしないという選択もあります
  • 消費税の判定……設立1期目は原則として消費税の納税義務がありませんが、資本金の額や特定期間の売上によっては課税事業者になります。インボイス発行事業者の登録をした場合は、1期目から申告が必要です
  • 役員報酬……1期目の役員報酬は、設立から3か月以内に決めて、その後は毎月同額で支払うのが原則です。詳しくは役員報酬の税務上のルールと決め方をご覧ください

いずれも決算のときに気づいても手遅れになるものばかりです。設立の段階で確認しておくべき事項なので、会社設立後の税務届出12種類とあわせてご覧ください。

8. よくある失敗

① 売上・費用の「期ズレ」

税務調査でもっとも指摘される項目です。3月中に納品・引渡しが終わった売上を、入金が4月だからという理由で翌期の売上にしてしまうケースが典型です。

税務上、売上を計上するのは入金した日ではなく、引渡しや検収が終わった日です。期ズレは、意図がなくても過少申告とみなされ、加算税や延滞税の対象になります。

② 実地棚卸をしない、または適当に済ませる

前述のとおり、在庫を少なく見積もることは利益を圧縮することと同じです。面倒でも数える。これに尽きます。

③ インボイスの経過措置の割合を切り替え忘れる

令和8年10月1日から、免税事業者などからの仕入れで控除できる割合が80%から70%に変わります。 会計ソフトで過去の仕訳をコピーして起票すると、税区分が80%のまま登録されてしまうことがあります。

取引日が令和8年10月1日より前か後かで割合が変わるため、決算のときにまとめて確認するのではなく、10月に入った時点で設定と運用を点検してください。経過措置の推移は第2回で図にまとめています。

よくある質問

Q. 決算の作業は、どこまでを会社側でやるものですか。

A. 決まった線引きはなく、顧問契約の内容によって変わります。 一般的には、実地棚卸と、期末時点の残高が分かる資料(通帳、借入金の返済予定表、在庫表、売掛金・買掛金の一覧など)のご用意を会社側にお願いし、決算整理から申告書の作成までを税理士側で行うことが多いようです。記帳をどちらが行うか、決算整理をどこまで会社側で入れるかは会社ごとに異なりますので、ご自身の契約内容をご確認ください。

Q. 決算書はいつ手元に来ますか。

A. 会社によりますが、申告期限の直前になるのは望ましくありません。 内容を確認していただく時間が必要ですし、納税額を知るのが遅いほど資金の準備が苦しくなります。月次を締めていれば、決算日の翌月中には概要をお示しできます。

Q. 決算日は変更できますか。

A. 定款を変更し、届出をすれば変更できます。繁忙期と決算作業が重なっている場合や、在庫がいちばん少ない時期に決算日を置きたい場合など、変更に合理性があるケースはあります。ただし税額への影響もあるため、事前にご相談ください。

Q. 申告を期限に間に合わせられなかったらどうなりますか。

A. 無申告加算税や延滞税の対象になります。さらに、2期連続で期限内に申告できないと、青色申告の承認が取り消されることがあります。青色申告が取り消されると、赤字の繰越しなどの特典が使えなくなります。期限は必ず守ってください。

まとめ

  • 決算日から申告・納税までは2か月。株主総会は3か月以内なので、順番が逆転しうる
  • 決算整理は棚卸・減価償却・経過勘定・貸倒引当金の4つが中心
  • 作る決算書は貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表の4種類
  • 申告するのは法人税と地方法人税/法人住民税と法人事業税/消費税。赤字でもかかる税金がある
  • 効くのは決算日より前。仮払金の精算・不要な固定資産の処分・納税見込みの把握を先に
  • 会社と税理士の分担に決まった形はなく、契約の内容や会社の体制で変わる。ただし実地棚卸や期末残高の資料は会社側で用意することが多く、ここが早いほど決算は早く終わる
  • 1期目は青色申告の承認申請・開業費の扱い・消費税の判定・役員報酬に注意
  • 失敗の代表は期ズレ。売上は入金日ではなく引渡し・検収の日で計上する

これで連載は最終回です。第1回から通してお読みいただくと、証憑を集める→記帳する→毎月締める→決算して申告するという1本の流れとしてご覧いただけます。どの工程も、前の工程が整っていることが前提になっています。決算が大変な会社は、たいてい月次が整っていません。

板橋区大山の当事務所では、毎月お伺いする巡回監査で、この流れが回る状態を一緒に作っています。「決算のたびに毎年バタバタする」「納税額が直前まで分からない」という方は、お気軽に無料相談でお尋ねください。税理士と行政書士の両方の登録がありますので、許認可や契約書まわりのご相談もあわせてお受けできます。

参考(公的情報)

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