【会計業務シリーズ④】月次決算と試算表の点検|毎月の締め方と、残高が合わないときの探し方
第3回では、日々の記帳(仕訳)を見ました。1か月分の記帳がたまったら、そこで区切りをつけます。これが月次決算です。
「決算は年に1回では」と思われるかもしれませんが、経理の実務では毎月締めるのが基本です。1か月ごとに残高を確定させておけば、年に一度の決算は、その積み重ねを合計する作業になります。逆に月次を飛ばすと、決算のときに1年分の誤りをまとめて探すことになります。
この記事では、月次決算で毎月何をするのか、そして出てきた試算表をどう点検するのかを、経理の手順にそって、板橋区大山の税理士・行政書士が整理します。
※ この記事は令和8年9月2日現在の法令・公表情報にもとづいています。
この連載(全5回)の構成
| 回 | テーマ |
|---|---|
| 第1回 | 会計業務の全体像|取引から決算・申告までの1年の流れ |
| 第2回 | 証憑の集め方と保存|経理の実務と電子帳簿保存法・インボイス |
| 第3回 | 日々の記帳|仕訳と勘定科目の基本 |
| 第4回(この記事) | 月次決算と試算表の点検 |
| 第5回 | 決算と法人税申告|決算日後2か月で何が起きるか |
1. 月次決算とは、1か月分の帳簿を締めること
月次決算という言葉は大げさに聞こえますが、やっていることは1か月分の記帳を入れ切って、各科目の残高を確定させることです。年次決算と比べると、位置づけがはっきりします。
| 月次決算 | 年次決算 | |
|---|---|---|
| 何をするか | 1か月分を締め、残高を確定させる | 1年分を締め、税額を確定させる |
| 法律上の義務 | なし | あり(申告期限は決算日の翌日から2か月以内) |
| 外部への提出 | なし | 税務署・都道府県・市区町村へ提出する |
| 精度 | 見積りで済ませてよい部分がある | 実地棚卸など、確定させる手続きが必要 |
| かかる時間 | 慣れれば1日 | 数週間 |
月次決算に法律上の義務はありません。それでも毎月締めるのは、誤りを見つけるなら、記憶が残っているうちのほうが圧倒的に早いからです。3か月前に生じた1,000円の差額は、もう誰も理由を思い出せません。
なお、締めた数字を経営にどう生かすか——予算と比べる、資金繰りの先を読む、といった話は、経理の作業の先にあるテーマです。この記事では帳簿を正しく締めるところまでを扱います。
2. 月次決算で毎月やること
やることは決まっています。毎月同じ順番で回すだけです。
このうち5番目が月次決算の山場です。ここを飛ばして試算表だけ出しても、数字が現実と合っていなければ意味がありません。
締切を決めておく
月次決算が遅れる原因は、ほとんどが証憑が集まらないことです。社内の締切をあらかじめ決めておきます。
| いつまでに | 何をするか |
|---|---|
| 翌月5日ごろ | 領収書・請求書・経費精算を、各担当から提出してもらう |
| 翌月10日ごろ | その月の仕訳をすべて入力し終える |
| 翌月15日ごろ | 突き合わせと点検を済ませ、試算表を出す |
「この日までに出さなかった経費は翌月まわし」と決めている会社もあります。締切がないと、月次はいつまでも締まりません。
3. 帳簿と現実を突き合わせる
試算表を出す前に、帳簿の残高が現実と一致しているかを確認します。突き合わせるのは次の3つです。
| 突き合わせるもの | 帳簿側 | 現実側 |
|---|---|---|
| 現金 | 現金出納帳の残高 | 金庫の中の紙幣・硬貨を数えた金額(現金実査) |
| 預金 | 普通預金・当座預金の残高 | 通帳やネットバンキングの残高 |
| 売掛金・買掛金・未払金 | 総勘定元帳の残高 | 取引先ごとの内訳(得意先元帳・仕入先元帳・未払金の取引先別残高)の合計 |
預金は1円単位まで一致するのが当たり前です。ここが合わないまま先へ進むと、後の作業がすべて無駄になります。
現金は、本来毎日締めるものです。その日のうちに金庫の中を数え、現金出納帳と合わせます。日をまたぐと、レシートも記憶もなくなります。
売掛金・買掛金・未払金は、総勘定元帳の残高と、取引先ごとの内訳の合計が一致しているかを見ます。取引先別に管理していないと、この突き合わせ自体ができません。合計だけが合っていても、個々の取引先の残高が誤っていることはあります。
4. 試算表には3種類ある
試算表は、総勘定元帳の数字を1枚に集計した表です。仕訳が正しく入っていれば、借方(左)の合計と貸方(右)の合計は必ず一致します。 ここが合わなければ、どこかに入力ミスがあるということです。
試算表には3つの形があります。
| 種類 | 何が載っているか | 使いどころ |
|---|---|---|
| 合計試算表 | 各科目の借方合計と貸方合計 | その月にどれだけの金額が動いたか(取引の規模)を見る |
| 残高試算表 | 各科目の残高(借方と貸方の差額)だけ | いま何がいくら残っているかを見る。いちばんよく使う |
| 合計残高試算表 | 上の2つを1枚にまとめたもの | 動いた金額と残高を同時に見られる。月次ではこれ |
なお、簿記の教科書には、借方と貸方を左右に分けて並べた試算表がよく出てきます。あれは印刷して目で確認するための伝統的な形で、実際に会計ソフトから出力される試算表は、1科目1行の形が一般的です。
計算は科目の性質で向きが決まります。資産・費用は「前月末残高 + 借方合計 − 貸方合計」、負債・純資産・収益は「前月末残高 − 借方合計 + 貸方合計」で当月残高になります。
5. 試算表を点検する——すべての勘定科目の残高が正しいか
突き合わせが済んだら、試算表を上から下まで通して点検します。見るのは一部の科目ではなく、載っているすべての勘定科目です。
判断の基準は単純です。「なぜこの残高になっているのかを、一言で説明できるか」。説明できない残高が1つでも残っているうちは、その月はまだ締まっていません。
点検は、次の6つの観点で行います。
| 観点 | 何を見るか | 見つかるもの |
|---|---|---|
| ① マイナスがないか | 全科目の残高が、本来と反対側に出ていないか | 記帳漏れ、貸借の逆入力 |
| ② 実物と合っているか | 現金・預金・借入金など、外部の資料と突き合わせられる科目 | 入力漏れ、二重計上 |
| ③ 内訳と合っているか | 売掛金・買掛金・未払金の総額と、取引先ごとの内訳の合計 | 消込漏れ、取引先の二重登録 |
| ④ 動いていない科目はないか | 毎月動くはずなのに、前月とまったく同じ残高の科目 | 計上漏れ、請求書の受け取り漏れ |
| ⑤ 仮の科目が残っていないか | 仮払金・仮受金・現金過不足・雑費 | 精算漏れ、科目の当てずっぽう |
| ⑥ 預り金が消えているか | 源泉所得税・社会保険料などの預り金 | 納付漏れ、天引き額の誤り |
① マイナスの残高は、それだけで異常のサイン
残高は科目の正常な側をプラスで表示するため、マイナスは本来と反対側に残高が出ていることを意味します。現金の残高がマイナスなど、現実にはあり得ません。マイナスを拾うだけで、異常の候補が一気に絞れます。
図2の未払金がその例です。負債の科目なのに残高がマイナスということは、支払いだけが記帳されて、もとの費用の計上が漏れている可能性があります。
④ 動いていない科目は、意外と当たる
地味ですが、よく効く観点です。毎月発生するはずの家賃・通信費・リース料が前月と1円も変わらないとき、請求書が1枚届いていないだけということがあります。金額が動いていないことは、画面上では目立ちません。前月と並べてはじめて気づきます。
⑤ 仮の科目と雑費は、翌月へ持ち越さない
仮払金・仮受金は、中身が確定していない状態で置かれる科目です。その月のうちに精算して、正しい科目に振り替えます。
雑費は、迷ったときの逃げ場になりがちです。雑費が膨らんでいる月は、科目の選び方そのものを見直すサインと考えてください。
⑥ 預り金は、納付すれば消えるはずの科目
見落としがちなのがここです。給与から預かった源泉所得税や社会保険料は、納付すれば残高が消えるはずの科目です。残高がじりじり積み上がっていく、あるいはマイナスに沈んでいく場合は、天引きと納付のどちらかがずれています。
なお、源泉所得税の納期の特例(半年分をまとめて納付する制度)の承認を受けている場合は、納付する月まで残高が積み上がるのが正常です。自社がどちらなのかを踏まえて見てください。
借方と貸方が一致していても、これらは見つからない
大切な点なので繰り返します。借方合計と貸方合計の一致は、「左右のバランスが取れている」ことしか意味しません。 科目の選び間違い、金額そのものの誤り、そもそも両方とも入っていない計上漏れは、一致したまま起こります。だからこそ、突き合わせと点検が必要になります。
前月と並べて見ると、点検が早く終わる
点検を効率よく終わらせるコツは、前月の試算表と並べることです。多くの会計ソフトは、月ごとの残高を横に並べた形(月次推移表)で出力できます。
- 前月と大きく変わった科目 → 理由を説明できるか
- 前月とまったく同じ科目 → 計上漏れではないか
- 前月にあって今月ない科目 → 入れ忘れではないか
これは会社の業績を評価するための見方ではなく、入力の誤りを見つけるための見方です。
6. 合わないときの、差額の探し方
残高が合わないとき、いきなり全部の仕訳を見直すのは効率が悪すぎます。差額そのものが手がかりになります。
2で割るのは、借方と貸方を逆に入力すると、正しい金額の2倍だけずれるためです。5,000円の入力を左右逆にすれば、差額は10,000円になります。
9で割り切れるのは、桁を1つ間違えたときや、数字を入れ替えて入力したときの特徴です。たとえば45,000円を54,000円と打てば差額は9,000円、1,000円を10,000円と打てば差額は9,000円です。
現金がどうしても合わない場合は、いったん現金過不足という仮の科目で処理して帳簿を実際の金額に合わせ、原因が分かった時点で正しい科目に振り替えます。ただしこれは応急処置です。この科目が毎月出てくる状態は、管理そのものを見直すサインです。
7. 月次でやっておくと、決算が楽になる3つの調整
ここまでは「記帳した数字を締める」話でした。もう一歩進めると、月ごとの数字が実態に近づき、決算のときの負担も減ります。 おすすめしているのは次の3つです。
① 減価償却費を月割で入れておく
パソコンや車両などの固定資産は、買った年に全額を経費にせず、耐用年数にわたって少しずつ費用にしていきます(減価償却)。これを年に1回、決算のときだけ入れる会社が多いのですが、そうすると期中の費用が実態より小さく計上されていることになります。
年間の減価償却費の見込みを12で割って毎月入れておけば、月ごとの数字がそのまま実態に近づきます。
② 支払いが翌月になる費用を、その月の費用として入れておく
月末締め・翌月払いの仕入や外注費、当月分なのに引き落としが翌月になる経費などは、支払った月ではなく、発生した月の費用です。ここを支払月で処理していると、月ごとの数字が上下してしまい、前月と並べても比べられません。
請求書が締切までに届かない場合は、見込みの金額で計上しておき、翌月に正しい金額へ入れ替えるという方法もあります。
③ 仮払金・仮受金を、その月のうちに精算する
前述のとおり、中身が確定していない科目です。残したまま決算を迎えると、決算書に「中身の分からない残高」が並ぶことになります。 月次のうちに領収書を出してもらい、正しい科目に振り替えてしまいます。
これらは決算のときにまとめてやることもできますが、毎月入れておくほうが、結果として作業も確認も楽になります。当事務所の巡回監査では、この3つを毎月の確認項目に入れています。
8. 月次決算でやりがちな失敗
① ズレを来月に持ち越す
いちばん多い失敗です。「数十円だから」「忙しいから」と先送りすると、記憶が薄れ、領収書もなくなり、二度と原因が分からなくなります。 その日のうちに解決するのが鉄則です。
② 二重仕訳を見落とす
第3回でも触れましたが、会計ソフトの自動連携と手入力が重なって同じ取引が2回計上される失敗です。月末の預金残高の突き合わせで見つかります。 ここを毎月やっていれば、決算まで持ち越すことはありません。
③ 前月の仕訳をコピーして、直し忘れる
毎月同じ取引は、前月の仕訳をコピーして起票すると早く入力できます。便利な機能ですが、金額・日付・税区分を直し忘れるという失敗がついてきます。とくに税区分は画面上で目立たないため、気づきにくいところです。
④ 入力して終わりにする
仕訳を入力したことで安心し、領収書を貼る・支払済の請求書をファイルに移すといった作業を後回しにするパターンです。入力と証憑の整理はセットの作業です。ここが崩れると、試算表の数字が正しいかどうかを確かめる手段がなくなります。
よくある質問
Q. 試算表は毎月いつまでに出せばよいですか。
A. 法律上の期限はありませんが、翌月の中旬までを目安にしています。時間が経つほど、誤りの原因を思い出せなくなるためです。
Q. 借方合計と貸方合計が一致していれば、数字は正しいということですか。
A. いいえ。一致は「左右のバランスが取れている」ことしか意味しません。 科目の選び間違いや、金額そのものの誤り、計上漏れは一致したままでも起こります。だからこそ、現実の残高との突き合わせが必要になります。
Q. 月次決算は、どこまで正確にやる必要がありますか。
A. 現金・預金・売掛金・買掛金・借入金といった残高のある科目は、現実と一致させてください。 一方、減価償却費のように年間の見込みを12で割って入れる部分は、月次では見積りで構いません。ただし毎月同じ基準で入れることが条件です。基準が月によって変わると、前月と並べる意味がなくなります。
Q. 月次決算まで税理士に任せることはできますか。
A. 可能です。ただし証憑を集めて渡す部分は会社側の作業として残ります。 当事務所では、毎月お伺いする巡回監査のなかで、帳簿と証憑の突き合わせを一緒に行っています。
Q. 月次決算をしていないと、何が困りますか。
A. 決算のときに1年分の誤りをまとめて探すことになります。1年前の差額は原因が分からず、結局は雑損失などで処理せざるを得なくなります。月次を締めていない会社ほど、決算に時間がかかります。
まとめ
- 月次決算とは、1か月分の記帳を入れ切って、各科目の残高を確定させること。法律上の義務はないが、誤りは記憶が残っているうちのほうが早く見つかる
- 手順は決まっている。山場は帳簿の残高と現実の残高の突き合わせ。預金は1円単位まで合わせる
- 遅れる原因は証憑が集まらないこと。社内の締切を決める
- 試算表は3種類。月次で使うのは合計残高試算表
- 点検するのはすべての勘定科目の残高。マイナス/実物との一致/内訳との一致/動いていない科目/仮の科目/預り金の6つの観点で通す
- 基準は「なぜこの残高になっているのかを、一言で説明できるか」
- 借方と貸方が一致していても、誤りは見つからない
- 合わないときは差額から探す。同じ金額/2で割る/9で割るの順で当たる
- 減価償却の月割・未払費用の計上・仮払金の精算を毎月やると、決算が楽になる
- ズレは当日中に解決する。持ち越すと原因が分からなくなる
月次決算は、慣れると1日で終わる作業です。逆に、ためてしまうと決算前に何週間もかかることになります。毎月同じ順番で回すことが、いちばんの近道です。
「毎月の締め方が自己流になっている」「試算表のどこを点検すればよいか分からない」という方は、板橋区大山の当事務所まで、お気軽に無料相談でお尋ねください。毎月の巡回監査で、帳簿が締まる状態を一緒に作っていきます。
次回は連載の最終回、決算と法人税申告——決算日を過ぎてからの2か月で何が起きるのかを取り上げます。
→ 第5回:決算と法人税申告|決算日後2か月で何が起きるか