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【会計業務シリーズ①】会計業務の全体像|取引から決算・申告までの1年の流れを図解

「会社をつくったけれど、経理は何をどの順番でやればいいのか分からない」——創業されたばかりの社長から、いちばん多くいただくご質問です。

会計の入門書を開くと、いきなり「借方・貸方」の説明が始まります。しかし実務でつまずくのは、仕訳のルールそのものよりも、「いつ・何を・誰がやるのか」という全体の段取りが見えていないことのほうが圧倒的に多いのです。

この連載では、会社の会計業務を全5回に分けて、1年の流れに沿って整理します。第1回は、その全体地図です。

※本記事は令和8年8月22日現在の法令・公表情報をもとに作成しています。会社の規模・業種・決算月によって実務は変わりますので、個別の判断は税理士にご確認ください。

この連載(全5回)の構成

テーマ
第1回(この記事)会計業務の全体像|1年の流れと役割分担
第2回証憑の集め方と保存|経理の実務と電子帳簿保存法・インボイス(近日公開)
第3回日々の記帳|仕訳と勘定科目の基本(近日公開)
第4回月次決算と試算表の点検|毎月の締め方と、残高が合わないときの探し方(近日公開)
第5回決算と法人税申告|決算日後2か月の流れ(近日公開)

1. 会計は「3つの相手」のために作る

最初に押さえていただきたいのは、会計の数字は3つの相手に向けて作られているということです。ここを意識するかどうかで、経理を「面倒な義務」と感じるか「使える道具」と感じるかが分かれます。

会計の数字が届く3つの相手 日々の取引を記録した帳簿から、税務署へ提出する申告書、経営者が判断に使う月次の数字、金融機関へ提出する決算書という3つの成果物が生まれます。同じ帳簿がこの3つすべての土台になるため、記録の正確さがそのまま納税額・経営判断・借入条件に影響します。 同じ帳簿が、3つの目的すべての土台になる 帳簿(記録) 日々の取引を仕訳で記録 ① 税務署・自治体 法人税・消費税などの申告 期限までに正しく計算 =法律上の義務 ② 経営者ご自身 今月は儲かったのか 資金はいつまでもつのか =いちばん使われない ③ 銀行・取引先 融資審査・与信判断 補助金・許認可の添付書類 =借入条件に直結
図1:会計の数字が届く3つの相手。②の「経営者自身のため」がいちばん後回しにされがちですが、本来は最も価値のある使い道です。
相手使われ方求められること
税務署・都税事務所など法人税・消費税などの申告書のもとになる期限までに、法令どおりに計算されていること
経営者ご自身値上げ・採用・設備投資などの判断材料早いこと。3か月前の数字では判断に使えない
金融機関・取引先融資審査、与信判断、補助金の添付書類説明できること。数字の裏づけがあること

ここで強調したいのは、「早さ」は税務署のためではなく、社長のために必要だということです。申告は決算日後2か月以内に間に合えばよいのですが、経営判断のための数字は「今月分が翌月の半ばまでに見えている」状態でなければ役に立ちません。

当事務所が毎月お伺いする巡回監査を基本の形にしているのは、この「早さ」を確保するためです。1年分をまとめて処理すると、税額は同じでも、判断に使える機会を12回失うことになります。

2. 会計業務は「日々・毎月・年1回」の3つの層でできている

会計業務を1本の長い作業として捉えると、途方もない量に見えます。しかし実際には、繰り返しの周期が違う3つの層が重なっているだけです。

会計業務の3つの層と6つのステップ 会計業務は3つの周期に分かれます。日々の層では、取引が起き、証憑を受け取り、記帳します。毎月の層では、試算表で残高を確認し、月次決算として締めて経営判断に使います。年1回の層では、決算を組み、申告と納税を行います。前の層の記録が正確でなければ次の層は成り立たないため、日々の作業がすべての土台になります。 日々(毎日〜毎週) 毎月 年1回 ① 取引が起きる 売る・買う・払う ② 証憑をそろえる 請求書・領収書・通帳 ③ 記帳する 仕訳として入力 ④ 試算表を出す 残高が合うか確認 ⑤ 月次で締める 読んで手を打つ ここが経営に効く層 第4回で解説 ⑥ 決算を組む 棚卸・減価償却など ⑦ 申告・納税 決算日後2か月以内 期限に遅れると 加算税・延滞税の対象
図2:会計業務の3つの層。左の層が崩れると右の層は必ず崩れます。決算だけを急いでも間に合わないのは、このためです。

図の左から右へ、前の層の品質がそのまま次の層の品質になります。領収書が集まっていなければ記帳できず、記帳ができていなければ試算表は出ず、試算表が出なければ決算は組めません。

「決算前に慌てて1年分の領収書を持ち込む」という状態が苦しいのは、3つの層を2か月に圧縮しているからです。逆に、日々の層を仕組みにできれば、決算はほとんど自動的に終わります。

3. 1年間のスケジュール(3月決算の会社の例)

では、実際の1年はどう流れるのか。もっとも多い3月決算の会社を例に並べます。

3月決算の会社の1年間の主なスケジュール 3月決算の会社では、4月が期首です。6月から7月10日にかけて労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届、7月10日に源泉所得税の納期の特例による納付があります。11月末に法人税と消費税の中間申告、12月に年末調整、1月31日に法定調書と給与支払報告書、償却資産申告書の提出、3月31日が決算日で棚卸を行い、5月31日が法人税や消費税などの申告と納付の期限です。この間、毎月の記帳と月次決算を継続します。 3月決算の会社の1年(青=税務/灰=社会保険・労働保険/赤=決算) 期首 4月1日 中間申告 11月末 法定調書等 1月31日 申告・納税 5月31日 4月 6月 8月 10月 12月 2月 4月 労働保険更新 算定基礎届 7/10 年末調整 12月 決算日・棚卸 3月31日 ※この1年を通じて、毎月の記帳・給与計算・源泉所得税の納付・月次決算が続きます。 ※中間申告の有無・回数は前期の税額によって決まります。日付が休日の場合は翌開庁日が期限です。
図3:3月決算の会社の1年。決算日(3月31日)から申告期限(5月31日)までが、いわゆる「決算の2か月」です。

毎月やること

時期やること補足
月初〜月中前月分の記帳を終える通帳・カード明細・請求書をそろえて入力
給与支給日給与計算・社会保険料と源泉所得税の控除社会保険料は原則、前月分を当月給与から控除
毎月10日源泉所得税・住民税の納付前月に支払った給与・報酬から預かった分
月中試算表の確認・月次決算残高が合っているか、利益と資金の動きを確認
随時請求書の発行・入金確認・支払売掛金・買掛金の残高管理につながる

給与を支払う従業員が常時10人未満の会社は、「源泉所得税の納期の特例」の承認を受ければ、毎月納付を年2回(1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日)にまとめられます。設立時に出しておきたい届出のひとつです。届出の全体像は会社設立後の税務届出12種類で解説しています。

ただし当事務所では、申請は出しておいたうえで、実際の納付は毎月していただくことをおすすめしています。 理由は2つあります。

  • 6か月分をまとめて集計するのは、思いのほか手間がかかります。 毎月納付であれば、その月の給与計算の流れでそのまま納付まで終わります
  • 1か月分では小さな金額でも、6か月分となると納付額が重くなります。 納付の時期に資金が足りない、という事態が起こりやすくなります

特例を受けていても、毎月納付することに問題はありません。

そして、申請を出しておくこと自体に、期限を守るうえでの効果があります。 源泉所得税は納期限を1日でも過ぎると不納付加算税の対象になり、自主的に納付した場合でも納付税額の5%、告知を受けた場合は10%です(国税通則法第67条)。これとは別に延滞税もかかります。

一方、特例の承認を受けていれば法定の納期限は7月10日と1月20日になるため、毎月納める運用でうっかり数日遅れても、その期の納期限内であれば期限内納付です。届出で期限のリスクを抑えたうえで、実務は毎月納める——これがもっとも効率的だと考えています。

年に一度やること

時期やること
6月1日〜7月10日労働保険の年度更新(前年度の確定保険料と当年度の概算保険料の申告・納付)
7月1日〜7月10日社会保険の算定基礎届(4〜6月の給与から標準報酬月額を決め直す)
前期の税額に応じて法人税・消費税などの中間申告・納付
11月〜12月年末調整(従業員から書類を集め、1年分の所得税を精算)
1月31日法定調書合計表・源泉徴収票、給与支払報告書(市区町村へ)、償却資産申告書
決算日棚卸(在庫の数量を実際に数える)
決算日後2か月以内決算書の作成、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・消費税などの申告と納付

賞与を支給したときは、別途「賞与支払届」の提出が必要です。こちらは賞与支払届とは?提出期限・書き方と作成の流れで動画つきで解説しています。

4. 誰がどこまでやるか|社内と税理士の役割分担

「経理は全部お願いできますか」というご質問もよくいただきます。答えは「できる部分とできない部分がある」です。分担の型は、おおむね次の3つに分かれます。

会社側でやること税理士側でやること向いている会社
A:自社で記帳証憑の整理、記帳(仕訳入力)まで内容のチェック、月次の解説、決算・申告経理担当者がいる。数字を自社で持ちたい
B:分担型証憑を集めて渡す、請求・入金管理記帳の代行、月次の解説、決算・申告社長+少人数。経理の専任者がいない
C:記帳から依頼証憑を集めて渡すことに集中記帳から決算・申告まで一括創業直後、まず本業に集中したい

いずれの型でも、会社側から切り離せない仕事が2つあります。

  1. 証憑を集めること。取引の相手から請求書や領収書を受け取るのは、取引の当事者である会社しかできません。
  2. 取引の中身を説明できること。「この支出は何のためか」を知っているのは社長と社員です。ここが空白だと、税務調査で説明できない支出が残ります。

逆に、税理士でなければできない仕事も法律で定められています。税理士法は、他人の求めに応じ、業として行う税務代理・税務書類の作成・税務相談を税理士業務と定め、税理士・税理士法人でない者がこれを行うことを禁じています(税理士法第2条、第52条)。「記帳だけ格安で」というサービスと税理士の関与を混同しないよう、ご注意ください。

一方で、自社の申告書を自社で作ること自体は禁じられていません。 ここで制限されているのは「他人のために業として行う」場合だからです。ただし税務書類の作成は専門性が高く、判断を要する場面も多いため、実際には税理士でなければ難しいのが実情です。

創業直後は C型で始めて、事業が軌道に乗り経理担当者を採用した段階で B型・A型へ移していく——というのが、当事務所でよくお手伝いする流れです。

ただし近年は、クラウド会計・フィンテック・AIといった技術が大きく進んだこともあり、この流れが唯一の正解ではなくなりました。銀行やカードのデータは自動で取り込まれ、仕訳の候補も提案されるようになっています。そのため、パソコンの操作が苦にならない方であれば、創業直後から自社で記帳するほうが効率的というケースが増えています。

自社で記帳すると、数字が手元にある状態で経営判断ができるという利点もあります。「先月はどうだったか」を人に聞かなくても分かる状態は、それ自体が強みです。

どの型が向いているかは、経理にかけられる時間と、パソコン操作への慣れによって変わります。最初にどれかに決め切る必要はありませんので、迷われている場合はご相談ください。

5. 開業時にまず決めておきたい5つのこと

会計業務の土台は、実は開業時のいくつかの決定でほぼ決まってしまいます。

決めることポイント
① 事業年度(決算月)繁忙期と決算作業が重ならない月を選ぶ。設立後に変更もできますが手間がかかります
② 会計ソフト銀行・カードのデータを取り込めるものを選ぶ。税理士との共有方法も確認
③ 事業用の口座とカード個人のものと必ず分ける。ここを分けるだけで記帳の手間は半分以下になります
④ 証憑の集め方・保存場所紙とデータの置き場所を最初に1つ決める(第2回で詳述)
⑤ 月次の締め日「毎月○日までに前月分を締める」と決める。決めないと締まりません

とくに③の口座・カードの分離は、費用ゼロで最大の効果があります。事業用口座だけを見れば取引の大半が追える状態にしておくと、記帳の手間も、後の税務調査での説明の手間も大きく減ります。

決算月・資本金・役員報酬という「設立時に決める3つの数字」については、資本金・決算月・役員報酬の決め方で詳しく取り上げています。

6. つまずきやすい3つのポイント

① 「お金が動いた日」で処理してしまう

会計では、お金が動いた日ではなく、取引が起きた日で記録します(発生主義)。3月に納品して4月に入金された売上は、3月の売上です。ここを取り違えると、利益が実態とずれ、正しい税額も出ません。詳しくは第3回で扱います。

② プライベートな支出が混ざる

社長個人の買い物を会社のカードで払うと、その分は経費(損金)ではなく役員への貸付金や給与として扱われることになります。役員給与は損金にできる形が限られているため、思わぬ課税につながります。役員報酬のルールは役員報酬の税務上のルールと決め方をご覧ください。

③ 期限を知らないまま過ぎる

申告や納付が期限に遅れると、本来の税金に加えて加算税・延滞税がかかります。とくに設立1期目は、初めての期限が一度に押し寄せます。決算日後2か月以内に株主総会が開けない事情がある場合には、申告期限の延長の特例という制度もあります。

よくある質問

Q1. 帳簿や領収書は、いつまで保管すればよいですか?

法人の場合、帳簿書類の保存期間は原則7年です。起算日は「確定申告書の提出期限の翌日」です。ただし、青色申告で欠損金(赤字)が生じた事業年度については10年保存する必要があります。設立初期は赤字になることも多いため、実務上は10年を前提に保存場所を考えておくと安全です。

Q2. 会計ソフトを使えば、税理士に頼まなくても大丈夫ですか?

記帳そのものはソフトで大幅に楽になります。一方で、どの勘定科目にするか、損金になるか、消費税の区分はどれかという判断はソフトが代わってくれません。判断を誤ったまま1年分入力すると、決算時にすべてやり直すことになります。また、税務書類の作成は専門性の高い業務のため、事実上、税理士でなければ困難です。

Q3. 開業したばかりで取引がほとんどありません。それでも経理は必要ですか?

必要です。取引が少ないうちに仕組みを作っておくのが、いちばん楽な立ち上げ方です。取引が月に数件の時期に口座を分け、証憑の置き場所を決め、月次で締める習慣をつけておけば、取引が増えても同じやり方が使えます。

Q4. 赤字なら申告しなくてもよいのでしょうか?

いいえ。赤字でも申告は必要です。むしろ申告しないと青色申告による欠損金の繰越控除(赤字を将来の黄字と相殺する制度)が使えなくなるおそれがあります。また、法人住民税の均等割は赤字でも課税されます。

Q5. 決算月は自由に決められますか?

はい、法人は定款で自由に定められます(1年を超えない範囲)。「3月決算にしなければならない」という決まりはありません。繁忙期を避ける、消費税の免税期間を長く取るといった観点で選びます。

まとめ

  • 会計の数字は税務署・経営者・金融機関の3つの相手のために作る。「早さ」は社長のために必要
  • 会計業務は日々/毎月/年1回の3つの層。左の層が崩れると右の層は必ず崩れる
  • 毎月の柱は記帳・給与計算・毎月10日の源泉所得税の納付・月次決算
  • 年1回の柱は労働保険の年度更新、算定基礎届、年末調整、1月31日の法定調書等、棚卸、決算・申告
  • 申告・納付の期限は原則決算日後2か月以内。遅れれば加算税・延滞税の対象
  • 証憑を集めること・取引の中身を説明できることは、会社側から切り離せない仕事
  • 開業時に事業年度・会計ソフト・口座とカードの分離・証憑の集め方・月次の締め日を決めておく
  • 帳簿書類の保存は原則7年、青色欠損金がある事業年度は10年

次回は、この全体の流れのいちばん最初——証憑(しょうひょう)の集め方と保存を取り上げます。電子帳簿保存法によって「データで受け取ったものはデータで保存する」ことが原則となり、令和8年10月にはインボイスの経過措置も変わります。

→ 第2回:証憑の集め方と保存|経理の実務と電子帳簿保存法・インボイス(近日公開)

ご参考(令和8年8月22日現在)

「何から手をつければいいのか分からない」という段階のご相談を、当事務所はいちばん歓迎しています。会計ソフトの選び方、口座の分け方、証憑の集め方といった土台づくりから、毎月お伺いする巡回監査で一緒に形にしていきます。税理士と行政書士の両方の視点から、許認可や設立手続きも含めてワンストップでご相談いただけます。板橋区・大山の当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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