会社設立後の税務届出12種類を税理士が解説|出し忘れると損をするものはどれ?
会社の設立登記が終わっても、それで手続きは終わりではありません。税務署などへの届出を出すかどうか・いつ出すかで、その後の税金や手間が大きく変わります。
当事務所では、新しく会社を設立されたお客様に対して、標準セットとして12種類の届出書・申請書の提出をおすすめしています(状況によって提出できないもの・提出しない方がよいものもあります)。この記事では、その12種類について「何のための届出か」「いつまでか」「出せないケースはあるか」を、板橋区大山の税理士・行政書士がまとめて解説します。
※ この連載は「板橋区で会社をつくる」シリーズの第5回(最終回)です。第1回:設立の流れ・費用・区の支援制度、第4回:創業融資の受け方もあわせてご覧ください。
まず全体像:12種類の届出一覧
| # | 届出・申請書 | 提出先 | ひとことで言うと |
|---|---|---|---|
| 1 | 法人設立届出書 | 税務署(国税) | 会社ができたことを税務署に知らせる |
| 2 | 青色申告の承認申請書 | 税務署(国税) | 税金の特典を受ける資格を取る |
| 3 | 電子申告開始届(e-Tax) | 税務署(国税) | 国税を電子申告するためのID取得 |
| 4 | 利用届出(新規)(eLTAX) | 地方税 | 地方税を電子申告するためのID取得 |
| 5 | 法人設立・設置届出書 | 都税事務所(地方税) | 会社ができたことを都道府県に知らせる |
| 6 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署(国税) | 給与を払う会社になったことを知らせる |
| 7 | 源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | 税務署(国税) | 源泉税の納付を毎月→年2回にまとめる |
| 8 | 申告期限の延長の特例の申請書(法人税) | 税務署(国税) | 法人税の申告期限を1か月延ばす |
| 9 | 消費税申告期限延長届出書 | 税務署(国税) | 消費税の申告期限も1か月延ばす |
| 10 | 申告書の提出期限の延長の届出書・申請書 | 都税事務所(地方税) | 地方税の申告期限も1か月延ばす |
| 11 | 国税ダイレクト納付の利用届出書 | 税務署(国税) | 国税を口座からワンクリック納付できるようにする |
| 12 | 地方税ダイレクト納付の口座振替依頼書 | 地方税(eLTAX) | 地方税も口座からまとめて納付できるようにする |
以下、1つずつ見ていきます。
1. 法人設立届出書(税務署)
会社を設立したことを税務署に知らせる、最も基本の届出です。設立から2か月以内に、定款の写しなどを添えて提出します。
これを出さないと、税務署からの案内が届かず、申告時期の把握などに支障が出ます。出せないケースは基本的にありません。全社必須です。
2. 青色申告の承認申請書(税務署)
12種類の中で、期限に一番気をつけてほしい申請です。
青色申告の承認を受けると、次のような特典があります。
- 赤字(欠損金)を翌年度以降に繰り越して、将来の黒字と相殺できる
- 30万円未満の資産をまとめて経費にできる特例(中小企業の少額減価償却資産の特例。適用期限があります)
- 各種の税額控除など、青色申告が要件になっている優遇の多くが使える
期限は、「設立から3か月を経過した日」と「最初の事業年度の終了日」のいずれか早い日の前日までです。設立1期目は赤字になることが多いからこそ、繰越しの資格を最初から取っておくことが重要です。
期限を1日でも過ぎると、1期目は白色申告になってしまい、設立初年度の赤字を繰り越せません。「提出できない」のではなく「間に合わなくなる」典型例なので、設立したらすぐ提出をおすすめします。
3. 電子申告開始届(e-Tax・国税)/ 4. 利用届出(eLTAX・地方税)
国税(法人税・消費税など)と地方税(法人都民税・事業税など)は、それぞれ別の電子申告システムを使います。e-Taxが国税、eLTAXが地方税の窓口で、両方のIDを最初に取得しておくと、以後の申告・納税・届出がすべてオンラインで完結します。
当事務所は電子申告を標準としているため、この2つは契約時に必ず整備します。出せないケースはありません。
5. 法人設立・設置届出書(都税事務所)
1と同じ趣旨の届出を、地方税側(東京23区の場合は都税事務所)にも行います。板橋区に本店を置く会社なら板橋都税事務所が窓口で、事業開始から15日以内が期限とされています。
なお、東京23区内は法人住民税・事業税の手続きが都税事務所に一本化されているため、区役所への届出は不要です。
6. 給与支払事務所等の開設届出書(税務署)
役員報酬や従業員の給与を支払う会社になったことを税務署に知らせる届出で、開設(給与を払い始める体制になった日)から1か月以内に提出します。
社長1人の会社でも、役員報酬を払うなら対象です。この届出をもとに、源泉所得税の納付書が送られてきます。
7. 源泉所得税の納期の特例の承認申請書(税務署)
給与から天引きした源泉所得税は、原則として毎月翌月10日までに納付が必要です。この申請をすると、年2回(7月10日と1月20日)にまとめて納付できるようになり、毎月の事務負担が大きく減ります。
提出できないケースがある届出です:給与の支給人員が常時10人未満の会社だけが対象です。従業員が増えて10人以上になったら、原則の毎月納付に戻す届出が必要になります。
また、承認は申請した月の翌月末に下りるため、適用開始までの間は毎月納付が必要な点にも注意が必要です。
8. 申告期限の延長の特例(法人税・税務署)
法人税の申告期限は原則「決算日から2か月以内」ですが、この申請をすると1か月延長できます。
提出できない・対象外になるケースがある申請です:定款で「株主総会は決算日から3か月以内に開く」と定めているなど、2か月以内に決算が確定しない事情があることが前提です。当事務所の方針書でも「株式会社のみ」としており、株主総会を持たない合同会社では通常は使いません。
もう1つ重要な注意点:期限を延長しても、本来の期限(2か月)から実際の納付までの期間には利子税がかかります。そのため実務では、2か月以内に見込みの税額を納付(見込納付)して利子税を避けるのが一般的です。「延長したから納税もゆっくりでいい」わけではない点にご注意ください。
9. 消費税申告期限延長届出書(税務署)
以前は消費税の申告期限は延長できませんでしたが、制度改正により、法人税の申告期限の延長を受けている法人は消費税も1か月延長できるようになりました。
8とセットの届出です:法人税の延長特例を受けていない会社は対象外です。こちらも納税期限は延びないため、見込納付の考え方は同じです。
10. 申告書の提出期限の延長の届出書・承認等申請書(都税事務所)
8で法人税の申告期限を延長したら、地方税(法人都民税・事業税)側にも同じ内容の届出・申請を行います。国税と地方税は別の役所なので、片方だけ出して片方を忘れると、地方税だけ期限内申告になってしまいます。8を出すなら必ずセットで提出します。
11. 国税ダイレクト納付の利用届出書(税務署)
e-Taxで申告した後、届け出た預金口座からワンクリックで納税(またはあらかじめ日付を指定して納税)できるようにする届出です。納付書を持って金融機関の窓口に並ぶ必要がなくなります。
書面での届出後、利用できるまで1か月程度かかるため、最初の納税(源泉所得税など)に間に合うよう、設立時に出しておくのがおすすめです。
12. 地方税ダイレクト納付の口座振替依頼書(eLTAX)
11の地方税版です。eLTAX(地方税共通納税システム)経由で、法人都民税・事業税や、従業員の住民税(特別徴収)を口座からまとめて納付できます。特に従業員の住民税は市区町村ごとの納付書がなくなるため、効率化の効果が大きい手続きです。
まとめ:区分けして覚える
| 区分 | 該当する届出 | ポイント |
|---|---|---|
| 全社必須・期限あり | 1・2・5・6 | 特に2の青色申告は期限厳守(過ぎると1期目の赤字が繰り越せない) |
| 電子化・効率化のため | 3・4・11・12 | 期限はないが最初にまとめて整備すると後がラク |
| 条件付き(出せない場合あり) | 7(給与10人未満のみ)・8〜10(決算体制・会社形態による) | 会社の状況を見て判断 |
当事務所では、税務顧問のご契約時にこの12種類をお客様の状況に合わせて取捨選択し、電子申告でまとめて提出しています。「自分の会社はどれを出すべきか」「もう期限が過ぎていないか」が気になる方は、板橋区大山の当事務所まで、お気軽に無料相談でお尋ねください。